オネーギン 続き

2008-12-06

オネーギンとレンスキーの決闘シーンから。
純粋すぎるレンスキーは友と恋人の冗談も笑って許すことができなかった。
そんなことで!と思われることだけどレンスキーにとっては大きな裏切りであり、
大人の世界の駆け引きとかそんなものが許せない正義感の持ち主である。
そんな汚さに染まるくらいなら死んだ方がましだとさえ思いつめているような
切羽詰った悲壮感が感じられた。
オネーギンは当らない様にピストルを撃ったにちがいないと思う。
でも、それが不運にも当ってしまった。

3幕が始まり、グレーミン宅の華やかなパーティーにオネーギンが現れる。
一目でさっきまでのオネーギンと違う風貌になっているのがわかる。
誇りとかプライドとかいうものが全く感じられない
老け込んだ男になっていた。
タチヤーナが登場し、夫と踊る。
タチヤーナの踊りに目が釘付けになってしまい、
オネーギンがいつ、あれがあの少女だと気付いたのかわからなかった。
でも、明らかに様子がおかしくなっていた。
見たいけど直視できない、目を反らしてしまうが見ずにはいられない。
どうしていいのかわからなくて周りをうろうろしていた。
タチヤーナも明らかにさっきまでとは別人のよう。
大人になり、美しくなったのは確かだけど、
さっきまでの若さの輝き、情熱を失って自分の感情を失ってしまった
あえて葬り去ったような空虚な美しさ。
愛されて結婚して、夫は大切にしてくれて何不自由ない暮らしで
傍目から見たらあの娘どうなるかと心配したけど幸せになって良かったわね、
と思われているだろう。
でも、あのオネーギンの拒絶、決闘で死んだレンスキーのこと
物事を深く考えるタチヤーナはものすごく色々なことを考えたはず。
オリガの方が、立ち直りが早かったのではないかな。
タチヤーナもレンスキーの気持ちがよく分かって
でも、この世の中を生きていくには大人として汚いこと、自分としては許せないことを
受け入れていかなくてはいけない、純粋で潔癖な心で生きていくことは
どんなに辛いことになるか、ということを理解したのだろう。
そして、自分はオネーギンへの恋を唯一の恋として自分の中にしまいこみ、
大人として生きることを選んだのだろう。
その中で、それなりに幸せを感じられるようになってきたみたい。
夫とのパドドゥにそんな感じの微妙な幸せ感が感じられた。
そんな時にあのオネーギンとの再会。なんという試練。
オネーギンはあの時タチヤーナが若すぎるから拒絶しただけで
タチヤーナが好きでなかったわけではない。
今、美しく洗練された大人になった姿を見て
単に惜しくなったというだけではないと思いました。
始めはこんなに美しく洗練されたのか、と驚き
冷たく拒絶したことを悔しく思ったかもしれない。
でも、夫と踊る彼女を見ているうちに、彼女もあれから自分と同じように
苦しんで空虚な気持ちで毎日を送っていたことがわかる。
自分の人生に再び光を与えてくれるのは
同じ苦しみを持っているであろう、そして自分の苦しみを理解してくれる
ただ一人の人タチアーナしかいない、と分かったのだと思う。
手紙にはそんなことが書いてあったのだと思う。
だからこそ、タチヤーナも心を強く動かされたのだろう。
ただ、君を振ったのは若かったからで今の君は大人になって美しくなったので
僕は君を愛している、この愛を受け入れてくれという身勝手な手紙であったら
タチヤーナも拒絶するのにあれほど苦しむことはなかったと思う。
今まで、オネーギンの舞台をオペラでも見たことはなく、小説も読んだ事はなかった。
ストーリーだけ聞いていても、なぜオネーギンからの手紙でここまで
タチヤーナが拒絶するのに苦しむのかが理解できなかった。
ルグリと仲間達でルグリとルディエールの手紙のパドドゥを見て
タチヤーナの深い苦しみが伝わってきたのだけど、なぜ?と思ってしまった。
自分を冷たくあしらった男が美しく成長した自分を見て
惜しくなったからやっぱり付き合って!と言ってきた所で
「フン、何よ。馬鹿な男ね」と拒絶するのは簡単なことじゃないの?と思っていました。
でも、このバレエを見たらそういうものではないということがわかった。
少なくとも、このバレエではそういう単純なものではない
二人に深い様々な心情があることが理解できた。
手紙のパドドゥは壮絶でさえあった。
最初は毅然としていたタチヤーナも
あれほど誇りを持っていた人がこんなに哀れな姿になって懇願する姿に
複雑な思いが沸き起こってくる。
徐々に、あの頃の情熱が蘇ってきて激しく踊る。
さきほどの夫との踊りと全く違う感情があふれ出すような
情熱を思い出している。
ついつい感情に流されそうになるが、最後のところで理性を取り戻し
オネーギンを拒絶する。
オネーギンもタチヤーナのつらさを理解し、泣く泣く去っていく。
自分のことを受け入れて、彼なりに愛してくれる夫を裏切ることはできない。
こうすることが一番正しいと彼女は必死に決断した。
行っては戻り揺れ動く、そういう複雑な感情が二人のパドドゥから見事に伝わってきた。
二人の指の先、つま先、反らせた体、振付、音楽が見事に一体となって物語を語っていた。
ずしーんと会場中の人の心にせまってきたのがわかった。
みんなが息を潜めて成り行きを見守っていた。
こんな濃い舞台はなかなかない。見ることができて本当に良かった。
やはり、振付家自身のバレエ団、振付家の思いを誠実に受け継いでいるスタッフ
クランコとは実際会うことができなかった若いダンサーにもちゃんと受け継がれているのだろう。
シュツットガルトバレエ団のダンサーで踊られる舞台はかけがえのないものでした。
久々に深い物語ものを見たので、妄想全開で私だけの思い込みオネーギンになったかもしれません。
でも、それほどの深さのある舞台だったのは確かです。
お付き合いありがとうございます。ふうー。
明日は、ころっと変わって「眠り」です。
苦悩のレンスキーからキラキラ王子様になるフォーゲル君が楽しみ。

theme : バレエ
genre : 学問・文化・芸術

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オネーギン

ありがとうございます!
大阪でも最後のPDD感動的でしたか!
ああ、良かった!
同時間帯に音楽を聴きながら思いを馳せておりました。
ちゃんと終わりますようにって…
ぜひTBさせてくださいませね!

No title

早速お読み頂きありがとうございます。
ご期待に添えましたでしょうか?
久々に熱く語ってしまいました。
TB大歓迎です。宜しくお願いします。

はじめまして♪

きょん様、はじめまして。
私のブログにコメントをいただき、ありがとうございました。
きょん様は、「オネーギン」初体験だったのですか?
とても細かく観ておられて感心してしまいました!
言葉があるオペラや原作でも、いろんな解釈ができる、かなり奥深い作品だと思うので、言葉のないバレエでは、より一層、演じるほうにも見るほうにも、いろんな解釈が生まれてくるでしょうね。

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