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2009.02.27 (Fri)

ノイマイヤー講演会

大阪ハンブルク友好都市協会、ドイツ文化センター大阪主催、大阪ハンブルク友好都市提携20周年記念として開かれました。聞き手は関西唯一の音楽舞踊専門紙である関西音楽新聞編集発行人として関西文化の保持と発展に尽くしているらしい白石裕史氏。
一時間の時間設定と最初から無理っぽいと思っていたところ主催者側のドイツの方のはじめの挨拶が15分位ありました。
やっとノイマイヤー氏登壇。ノイマイヤー氏の隣に通訳の女性。スクリーンを挟んで聞き手白石氏が座りスクリーンには人魚姫、椿姫の舞台写真、ホームページやプログラムなどでに出ているものがスライドショー形式で映し出されながら白石氏の質問に通訳さんが通訳してノイマイヤー氏に聞きその答を通訳するという形で進みました。ドイツ文化センター主催なのに英語での通訳でした。英語の方が内容がわかるので嬉しかったのですが不思議。
通訳さんの日本語訳はかなり的確で長い複雑なノイマイヤーさんのお話を
よくまとめていらっしゃったと思います。通訳さんの日本語訳と私が英語で聞き取った断片などから
私の解釈で理解した内容になっていますので若干違う点があるかもしれませんが
ご了承下さい。

白石:ノイマイヤーさんはハンブルクバレエで6回目の日本公演で何度も日本に来られていますが
日本と大阪の印象についてお聞かせ下さい。

ノイマイヤー:私は仕事で来ていて観光に来ているのではないので、
ほんの少しの面しか知りませんので、日本のことについて語ることはできません。
ただ、東京バレエ団の皆さんに作品を振付けたり、一緒に仕事をする中での印象を
語るとすれば、一緒に働く相手がとても静かであることが、私にとってはとても
居心地のいい環境に感じられます。日本人のマナー、お互いを丁寧に扱う姿勢、
相手への敬意などは非常に私を落ち着かせてくれます。
そんな人々からはファンタジー、インスピレーションを感じ取ります。
言葉が通じなくて、自分の気持ちが的確に相手に伝わらないことは
かなり大きなフラストレーションになるが、その困難さが、
バレエを通して相手に気持ちを伝えようと、より多くの努力をすることに繋がり、
バレエを通してコミュニケーションをとるのに大いに役立っていると思う。

白石:今回上演される新作人魚姫には袴やくまどりなど日本文化からの影響が
ありますが、どういうところからそのような手段を思いつかれたのでしょうか?

ノイマイヤー:人魚姫のだけでなく、私の作る全ての作品でのテクニックは
私の舞台での経験から来ています。
私は、学生の時日本の文化(歌舞伎、文楽、詩、俳句など)に対し、
非常に興味、愛情を持っていました。
舞台上での伝える手段としてのテクニックはそれぞれのシーンに合うように
使われている。飾り立てて違ったものに見せるための装飾的なものではなく
全て自分の内面から出たものなのです。
例えば、オデュッセイアという作品を見せるためには、ファンタスティックなもの
イリュージョンを使って表現することは難しい。
歌舞伎はそういうものを表すことに相応しい。
人魚姫では足の無い女性をいかにして舞台上で動かすか、踊らせるかということが
不可欠な問題だった。現代に舞台上で人魚を表現することは
冗談めいているような気がする。
ある時狂言を見ていて、突然演者の足がないように見えたという私の経験から
人魚を表現するのにこの方式(袴をはくこと)がぴったりだと思いついたのです。
ディズニーのリトルマーメイドのことを考えると暗い気持ちになります。
アンデルセンの人魚姫は、もっと人間の内面、本質の部分を描いたもので
HAPPY HAPPYなものでは決してないと思っていたから。
この人魚姫でアンデルセンが描きたかったエッセンスは
「信じられないほどの自己犠牲」です。
人魚姫は、舌を切られて歌えないなどという信じられないような犠牲を払います。
人魚姫はいかなる犠牲を払ったか、そうまでして人間世界へ行ったという
残酷さを描くことができなければ、私がこのバレエを作る意味はないと思いました。
また、これを表現する衣装が難しかった。
この衣装は下は袴ですが、上半身はバリのものを
ヒントにしています。髪形はアフリカから来ています。
全ての面においてそうなのですが、私自身が受けた色んなカルチャーからの影響を
熟成させたものから生まれたのです。

S:人魚姫を見た知人からは人魚姫が人間になるシーンが
ものすごくショッキングだった、いやすごく官能的だった、などと
色々な感想を聞いています。
この作品で伝えたかったメッセージを一言でいうとなんでしょうか?

N:そのお答えは、今お話したことになると思うのですが、
一言でそれを語れるなら、バレエを作る意味がないと思います!!
それに付け加えるなら、先ほど言ったとおり見る人にショックを与えることが
できなければ、私が作者のメッセージを正しく伝えられていない事になります。

S:バレエリュス100年のアニバーサリーの年ですが、ロシアバレエが
世界のバレエ界に与えた影響をどのようにお考えですか?

N:私は確かにロシアバレエに若い頃から憧れていた。
パリにディアギレフのバレエリュスが来た時、パリのバレエ界は
デカダンスが横行していた。男の役も女の役も女性が演じていて
マンネリ化していた。ロシアバレエは聞いたことのない新しい音楽、
新しいコンポーザー、新しいバレエを見せて大センセーションを巻き起こした。
カルサヴィナ、パブロワ、ニジンスキーと言ったスターダンサーたちは
バレエを美しいだけでなく、バレエに人間的でとてもエモーショナルな要素を持ち込んだ。
バレエリュスについてのアニバーサリーイベントとしてハンブルクバレエでも
いくつかのことをします。
詳しくはHPで見ていただければと思いますが主なものは
1909年から1929年にかけての音楽での作品「ダフニストクロエ」
「牧神の午後」「春の祭典」を上演します。
春の祭典はニジンスキーオリジナルの春の祭典を再現(だったと思う)します。
もちろん「ニジンスキー」も上演します。
また重要な作品として「アルミータの館」「放蕩息子」(バランシンの作品です)を上演します。
そして、ニジンスキーの様々な天才的な才能を紹介するために
私のコレクションからニジンスキーの描いた絵、写真、ブロンズ像、彫刻など
85点を見せる展覧会を開きます。また、ニジンスキーと同時代のロシアの画家の
作品も同時に、見せます。ニジンスキーと直接関係はないかもしれませんが
ニジンスキーの位置づけがより明確になると思います。

S:ここで残念ながら時間が来てしまったので私からの質問はここまでにして
お越しくださった皆様からの質疑応答に移ります。是非、質問なさってください。

一般客からの質問
Q:私はヨーロッパ、もちろんドイツにも行き様々な舞台を見ましたが
制作サイドの見せたいものと観客の求めるものにかなり温度差がある舞台を
本当に何度も見ました。ノイマイヤーさんは見る側の求めるものを
どの程度考慮に入れ、またどのようにバランスをとられますか?

N:私は今までそのようなことは考えたことはない。
いつも自分の見せたいものをやってきたし、自分が伝えたいものを表現して
観客にそれを感じ取ってもらうのが正しいアートだと思っている。
観客からの反応が芳しくないとすれば、それは伝える側の意図が
明確でないのが原因だと思います。
私は毎回客席から自分の舞台を見ます。
それは、どうすれば自分の意図をもっともっとクリアーに観客に伝えることができるか
ということを考えるためです。

Q:ノイマイヤーさんは振付をされる時は、自分の振付を完全に作ってそれを
ダンサーに伝えるのか、ダンサーからインスピレーションを受けて作られるのか
どちらでしょうか?

N:私は、作品は振付家である私個人の言葉を伝えるものであると考えています。
そして、振付をすることはダンサーと振付家との対話であると思っています。
まず、私は自分の伝えたいことを私自身が踊ってダンサーに見せます。
そして、ダンサーには映し鏡のようにその踊りを踊ってもらうことで
振付が出来上がっていきます。
また、初めはその役にどのダンサーが相応しいかは私にはわかりません。
何人かのダンサーにその役を踊ってみてもらい、どのダンサーが
一番私の伝えたいことを理解して表現してくれるか
私の気持ちに合ったダンスをしてくれるかを見て配役を決めます。
バレエにはきちんとしたテキスト(振付の意味?)が必要です。
いったんこれが完成されると、それからは色々なダンサーが踊ることによって
また、違うダンス、違う作品が生まれる。
私は以前、あるダンサーのために振付作品を作りました。
しかし、彼女は病気になってしまいその作品を踊れなくってしまい、
その作品は葬られることになってしまいました。
このような経験から、振付は一人のダンサーだけに限られるべきではないと
私は思います。一つの役を色んなダンサーが踊ることが望ましいと思います。

と、ここで時間が来てしまい、白石氏から
唐突にもう時間が来てしまったのでこれで終わりたいと思います。
ノイマイヤーさんありがとうございました。との一言
しかたないので観客も感謝の拍手を送りました。
やっと話がおもしろくなってきたところで急にぷつんと切られた感じで
消化不良な感じでした。
ノイマイヤーさんも、少しきょとんとした表情でしたが
さっと席を立ちすたすたとあっという間に部屋から出て行かれました。

レジュメとしてノイマイヤー氏、白石氏のプロフィールのA4用紙一枚
それと、民音さんの今回の公演のチラシのコピー版
それと、人魚姫についての概要と、プログラムに載っているのと
微妙に文面が違う詳しいストーリーのB4版のコピーが配られていて
椿姫と人魚姫のシーン写真がスクリーンに映されていたので
てっきり人魚姫のことについて深く掘り下げる講演会かな?
と思っていたのに、しょっぱなの質問が何故ダンスに付いての質問でなく
日本の印象だったことのか、人魚姫についても質問がとても大雑把で
ロシアバレエについての話もそれはそれで興味深くはありましたが
短い時間なので、そんな一般的な質問でなく深く作品についての
話を聞きたかったなーと思います。

ただ、ノイマイヤーさんはそんな質問の答えにも自分の伝えたいことへ
うまく話を持って行ってくださってその答えは非常に興味深いものでした。
中でも、興味深かったことは配役を選ぶ時、伝えたい私の気持ちに
合った踊りをしてくれるダンサーを選ぶといいうこと。
その役のイメージに合っているとかそういうことではないのですね。
サーシャは三浦さん曰く、ノイマイヤーさんの完璧な楽器
そういうことですね。(何でもサーシャに結びつけてすみません。)
それと、毎回客席から見ていらっしゃいますがどういうところに
重点を置きながら見ているのかな?ということに興味があったので
思いがけない質問からその答えが聞けて嬉しかったです。
前回、ノイマイヤーさんの後ろの席で見ていた感じでは
群舞がずれたとかそんな単純なものを見ているのではないなと
感じたので。その作品が「眠り」だったのでフォーメーションが崩れたり
ということは気にしているように感じましたが。

また、おもしろかったのは
いきなり、ノイマイヤーさんは白石氏からの長い質問を丁寧に通訳していた
通訳さんに、「質問が長すぎます。私の答えが短くなってしまう。
(私の話す時間が短くなるという意味かな?)といきなりの突っ込み!
通訳さんも苦笑。質問を準備してきたのにもっと簡潔にまとめて
下さらなかった白石さんに注意してください。ノイマイヤーさん。
でも、そんな風にずばっと言ってしまうノイマイヤーさん素敵です。

そして、途中までスタッフの方がスライドショーを流していたのですが
全く、話がそれと関係ないように思えたので
途中でその映像を切ってPCを持って出て行かれました。
それも、ちゃんと説明つきで見たかったのですが、話も聞きたいしこちらも
ちょっと困っていたので正しい判断だったと思います。
椿姫の写真でサーシャのアルマンが出てきたら、
そっちが気になって話をつい聞き逃したりと気が散ってしまいました。
人魚姫の衣装の話の時にノイマイヤーさんがこれを見てもらえば
とスクリーンを指すと、もう映っていなかったので
ノイマイヤーさんは「gone」と一言。
なんだか、せっかくの機会なのに何を語ってもらうか、
ノイマイヤーさんが何を語りたいかの打合せが
うまくできていなかったような気がしました。
これなら、脱線しまくりの三浦さんの方がコアな所を聞いてくれるので
良かったのにとちょっと残念です。

ノイマイヤーさんご苦労様でした。
あと2日神戸滞在を楽しんでいただけると嬉しいです。
今も、我が家から自転車で行ける身近な場所に
サーシャたちが居ると思うととっても幸せな気分です。
椿姫もいくつか発見があったので明日のうちに書きたいです。
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2009.02.27 (Fri)

ハンブルクバレエ団「椿姫」西宮公演速報!

やっとこの日を迎えました。
サーシャのアルマンについに会えました。
なんか言葉になりません…
とにかく、凄かった。壮絶なドラマを見せられました。
全てが素晴らしい舞台でした。
といっても、アルマンが舞台の端っこにいる間は
ずっとアルマンばかり見ていたので舞台の上での踊りは
ほとんど見ることができていなかったのですが…。
すごく踊りも見たかったのですが
何やら空想したりして幸せそうに微笑んでいたり、
幸せそうに眠ったり、目が離せませんでした。
アルマン父のユング素晴らしかったです。
マルグリットにアルマンと別れてくれるよう頼みに行った時の
最初はマルグリットに対し、卑しい稼業の女として無礼に接していたのが
彼女は純粋で気高い心で息子アルマンを愛している普通の女性なのだと
理解してからの、まるで自分の娘に対するような優しさで接する様が
まさに手にとるように伝わってきました。
(このバレエのあらすじではアルマンの将来のために別れてくれと頼んだことに
なっていますが、原作ではアルマンの妹が結婚したい相手がいて
その家族から兄が娼婦にうつつを抜かして自堕落な生活をしているとの
噂を聞き、兄がその女と別れなければこの縁談はなかったことにすると言われ
父が説得に来たことになっている。
妹の縁談という存在がこの説得には大きな意味を持つ。
それでなければ、父はアルマンとマルグリットのことを許したに違いない。)
アルマンと一緒になることを許してあげたい、許してあげなければ
という気持ちがどこかにありながらも、それでも、自分の娘を守るのは
自分しかいないのだ、ここにいるマルグリットは誰かに守ってもらわないと
生きていくことができない我が娘とは違い、自分の力で生きていくことのできる女性だから
大丈夫だと自分を納得させながら必死で説得する。
父の激しい葛藤も、マルグリットの哀しみをさらに大きくしている。
父が別れ際にマルグリットの額にキスする。
マルグリットが「一つお願いがあります。娘さんになさるように私に接吻してくださいませんか。
それによって私自身が浄化されて清い人間としてこれから生きていけそうな気がします。」
と言ったことからのキスなのですが、そのキスがものすごく愛情に満ちていて
まさにマルグリットのこれまでの人生を浄化するような大きな許しの行為でした。
そして、マルグリットへの感謝、敬意を表すように手にキスをして去っていきます。
けれど、キスしながらもまだ、これで良かったのか?という後悔も見えました。
見ごたえのあるシーンでした。
見ごたえのあるシーンだらけの舞台ですが…。

明日はノイマイヤーさんの講演会もあるのでこのへんで寝なくては。
サーシャはサーシャでなくアルマンそのものでした。ジョエルもマルグリットそのものでした。
あの激しい振付が、決められた振付でなく、
まるで彼ら自身の心のままに踊られたように感じられました。
振付というものじゃなくてまさに体を使って語られる言語でした。
カーテンコールではサーシャもジョエルも最初は放心状態。
何度かあってからノイマイヤーさんが出てこられて満足そうな微笑で
サーシャの手をぎゅっと握り、そして満面の笑顔で
みんなをそれーっと言う感じで前へ押し出すようにした時に
やっとサーシャに笑顔が出ました。満足そうな表情でした。
最後にはほぼ会場総立ちでスタンディングオベーションを送っていました。
ななめ後ろの席に座って見ておられた東京バレエ団の高岸直樹さんが
ブラヴォーと何度も叫んでおられました。(多分高岸さんの声だったと思います。)

今日は、とりあえず興奮のままに思いつくまま父についてのみの感想です。
残りは後日。

テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

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